「農業法人」とは、農業を営む法人の総称です。農業を営む法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、農事組合法人)であれば、任意でその名称を使用できます。
ただし、農地等の権利を取得するためには、農地法第3条の許可を農業委員会から受けることができる「農地所有適格法人(旧・農業生産法人)」に関する、次の要件を満たす必要があります。
・株式会社(非公開会社に限る)
・合名会社
・合資会社
・合同会社
・農事組合法人(農業協同組合等の2号法人)◎農業、又は農業関連事業の売上高の合計が、全体の半分以上を占めること
この「農業関連事業」とは、農業生産物の加工や卸、販売、レストラン、農業体験事業等、さまざまな内容を含みます。
◎総議決権の2分の1以上を保有する構成員(株主等の出資者)が、次のような農業関係者であること
・農地等を提供した個人
・農業又は農業関連事業への常時従事者
・地方公共団体や農業協同組合等
※農業関係者以外の方は、総議決権の2分の1未満の保有であれば構成員になることが可能です。
◎業務執行役員(取締役等)が、次の要件を満たす方であること
・役員の過半数が、その法人の農業関連事業に年間150日以上常時すること
・役員又は重要な使用人(農場長等)のうち1人以上が農作業に従事すること(原則年間60日以上)
※別に要件を満たせば、子会社(親会社が総株主の議決権の過半を有するもの)の役員を兼務できる特例があります。
以上が農地所有適格法人の要件ですが、この要件は農地の取得申請の際だけでなく、農地の権利を取得した後も継続して満たさなければなりません。
農地所有適格法人は毎事業年度終了後3か月以内に農業委員会へ事業状況等の報告を義務づけられています。
報告せず、又は虚偽の申告をした場合は30万円以下の過料が課せられますので、要件適合性の確保には充分に注意が必要です。
なお、手続きの面以外には、次のような点に注意する必要があります。
・事業に適した農地の購入又は借入
・事業に適した農業用の設備や農業機械、器具等の購入又は借入
・種苗、家畜及び家畜のえさ、肥料等
・水道光熱費
・燃料費
・役員報酬や、従事者の人件費
・農業大学校や就農準備校、民間機関、農家による研修の受講
・技術力のある従業員の求人及び雇用
・事業が軌道に乗るまでの運営資金や維持費等
なお、一般的には農業法人設立と事業開始に必要な金額は、1,000万円~2,000万円程度が目安となっています。◎農業ビジネスを行う地域を管轄する市町村、周囲の農家、農業ビジネスに関する専門家等との、協力関係や信頼関係を築くこと
農地等の権利取得には市町村等の合意が必要ですので、定款や事業計画を作成する際に市町村農業委員会等の関係機関や団体へ、事前に相談することをおすすめします。