農地を売買又は貸借する場合には、農業委員会等の許可を受ける方法(農地法)と、市町村が定める「農用地利用集積計画(利用権設定等促進事業)」を利用して権利を設定・移転する方法(農業経営基盤強化促進法)、農地中間管理機構を活用する方法(農地中間管理機構の推進に関する法律)の3種類があります。 

利用権設定とは、このうちの農業経営基盤強化促進法に基づく権利の設定・移転手続きのことをいいます。

市町村が定める「農用地利用集積計画」とは、農地の貸し手と借り手の貸借等を集団的に行うため個々の権利移動を1つの計画にまとめたもので、市町村が作成します。この計画によって、市町村は農地の個々の契約をとりかわすことなく、一挙に貸借等の効果を生じさせることができます。

利用権設定による農地の貸し借りを行えば、農地法の許可を取得する必要がありません。

利用権設定による農地の貸し借りを希望する場合、直近月の市町村によって定められた日までに農業委員会へ申出を行う必要があります。毎月の受付期限までに提出された申出は、不備がなければ翌月末までに権利設定が完了します。

利用権設定を受ける方(農地を借りる方)は、次の要件を満たす必要があります(市町村によって異なる場合があります)。

・利用集積計画に規定する農用地を効率的に利用して、耕作又は養畜の事業を行うこと
※借りる農地を含め、耕作又は養畜の事業を行う農地が30a以上であること等を求められます。

・農用地の全てについて、耕作又は養畜の事業を行うこと
・耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すること
・農業によって自立しようとする意欲と能力をもつこと
・農地所有適格法人以外の法人の場合は、誓約書を提出すること 

また、利用権設定の対象農地は原則として、次の要件を満たしている必要があります。

・相続税・贈与税の納税猶予の適用を受けていないこと
・農業者年金を受給するために経営移譲した(受けた)農地でないこと
・賃借権等が設定されていないこと

農地法の許可の場合は契約期限が到来しても解約の合意がない限り、原則賃貸借は解約されませんが、利用権設定による農地の貸し借りの場合は契約期限が到来すると賃貸借は終了し、離作料を支払うことなく自動的に農地が返ってきますが、更新すれば利用権が再設定され、継続して貸借することができます。契約期間の更新時期になった場合、受付期間の前月下旬ごろに貸し手と借り手の双方に、農業委員会から期間満了の旨が通知されます。

なお、利用権設定により後継者に農業経営を移譲した農業者年金の経営移譲年金を受給している方は、忘れずに更新の手続きを行う必要があります。更新の手続きをされないと経営移譲年金の支給停止となることがあります。