農事組合法人を設立するためには、次の要件について注意する必要があります。
◎農事組合法人が行える事業は、農業関連のものに限定されること
農事組合法人には「1号法人」と「2号法人」がありますが、それぞれ行える事業は次の事業に限られます。
〈1号法人〉
・農業に係る共同利用施設の設置(その施設を利用して行う、組合員の生産する物資の運搬、加工又は貯蔵の事業を含む)、又は農作業(耕作や収穫等)の共同化、及びこれらに付帯する事業
〈2号法人〉
・農業の経営(農事組合法人の行う農業に関連する事業で、農畜産物を原料又は材料として使用する製造、又は加工、その他農林水産省令で定めるものや、農業と併せて行う林業の経営を含む)に関する事業
つまり、1号法人、2号法人ともに、たとえば社会福祉事業、廃棄物処理業等は行うことができません。
◎組合員は原則として、次のような農業者であること
・農民(農業を行う個人事業主や法人)
・農業協同組合
・規定を満たした農地保有合理化法人
なお、農民以外のみなし農民や取引関係者等も一定要件を満たせば組合員となることはできますが、その数は、総組合員数の3分の1を超えてはならないとされています。
◎理事等の役員は組合員の中から選任すること
つまり、理事は農業者である必要があります。ただし役員定数の規定はなく、監査役の設置は任意です。
◎発起人には、農業を行う個人又は法人が3人以上必要であること
◎発起人が共同で定款の作成、役員の選任等を行い、主たる事務所の所在地で設立の登記をすること
定款は株式会社等と異なり、認証は不要です。
◎設立の登記日から2週間以内に行政庁へ「農事組合法人成立届出」の手続きを行うこと
届出の提出先は、組合員の所在地がすべて同じ都道府県内であれば都道府県、複数の都道府県である場合は国(地方農政局)になります。成立届出書の他、登記簿謄本や定款、事業計画書等が必要となります。
なお、行政庁への「認可」の手続きは必要ありません。
※株式会社等と同様、設立後に税務関係機関や社会保険関係機関への届出は必要です。
◎設立後は、毎事業年度の終了後3か月以内に、農業委員会へ事業状況等の報告を行うこと
以上のような内容が農事組合法人の要件ですが、設立するためには、農業委員会や農協等へ事前に相談をしておくことをおすすめします。
農事組合法人には、次のようなメリットがあります。
・農事組合法人が得た所得のうち、畜産業を除く農業所得に対し、要件を満たすことで事業税を非課税にすることができます。
・組合員への報酬の支払方法を、給与制、又は従事分量配当制(組合員が農事組合法人の事業に従事した程度に応じ、農事組合法人がその組合員へ報酬を分配すること)にするかを選択することができます。
・2号法人の場合は、農地所有適格法人(農地等の権利を取得して農業ができる法人)になることができます。