既存の農家の方にとって、将来的な問題も含めて農業を引き継いでいくことは大きな悩みの1つです。
農業の後継者又は第三者に承継しようとする場合、次のような流れで進める必要があります。
①事前の準備を進める
農業を引き継ぐための主な準備としては、次のようなものがあります。
・後継者の確保と育成
・承継する農業経営資産の整理
・相続する農業経営資産と推定相続人の整理
※第三者等に引き継ぐ場合、引き継ぐ農業経営資産をそれ以外の個人資産と分けておく必要があります。
※主な農業経営資産は、次のようなものです。
〈有形経営資産〉農地、施設、農業機械、資金等
〈無形経営資産〉経営理念、権限、人脈、生産技術、ノウハウ等
②後継者を就農させるための手続き、又は引き継ぎ先の第三者の確保を行う
③(後継者へ承継する場合)農業経営資産の贈与又は使用貸借契約を行う
(第三者へ承継する場合)農業経営資産の売却又は賃貸借契約を行う
(相続により承継する場合)農業経営資産の相続を行う
このような流れで事業承継を行いますが、次のような手続きが必要となります。
①(認定農業者の場合)農業経営計画の認定申請を行う
5年後、10年後の経営プランを立てて、市町村等の認定を受ける手続きです。なお、複数市町村で農業を営む方が経営改善計画の認定を申請する場合は、各市町村に申請することなく、営農区域に応じて都道府県又は国へ農業経営改善計画の認定申請を行うことができます。
(後継者が未就農の場合)農業大学校や農家等で研修を受ける
研修計画の承認を受ければ、農業次世代人材投資金(準備型)を受けることができます。
②事業について、譲渡する方は廃止届、承継を受ける方は開業届を提出する
通常、事業の廃止及び開始から1か月以内に行う必要があります。
また、従業員がいる場合は、労災保険、雇用保険、社会保険についての廃止と設置の手続きが必要です。
③農地法3条の許可申請と、土地や建物の所有権移転登記等を行う
それぞれ、農業委員会と法務局に行う必要があります。
④農業経営に関わる名義変更等を行う
JA組合員としての加入や出資金持分の移譲を含めた変更、農業者年金の加入、農業共済や補助金・助成金を受けている場合はその変更手続き等が必要となります。
⑤承継を受ける方の所得税に関する手続きや、譲渡する方の消費税及び所得税の申告手続きを行う
⑥承継を受ける方の所得税又は贈与税(贈与を受ける場合)の申告手続きを行う
⑦(課税対象となった場合)承継を受ける方の消費税の申告手続きを行う
なお、承継を受ける方は要件を満たすことで、経営所得安定対策等の交付金等を受けることができます。
農家の方が亡くなった後に、組合等を通して事業承継される場合もありますが、その場合は急な対処が必要となるため、承継を受ける方が確保できないこと、契約解除や事業の縮小等をすること等があることから、予め承継の計画を立てておくことをおすすめします。