まず「ハラール」には、イスラム教徒(ムスリム)の方々が、戒律上、食べることが許された食べ物及び作法を指す意味があります。野菜や果物類は基本的に全てハラールに含まれますが、動物は牛やニワトリ、ヤギ、ヒツジは食べて良いものの、ハラールの作法に則ってと畜や加工がされた食品である必要があります(豚由来の食品やアルコール成分を含む食品は禁じられています。また、認められている食材でも、そのと畜や加工の方法に厳格な基準があります)。
日本のハラール対応としては、たとえばハラールフード専門コーナーを設けている大手スーパーや、ハラール認証を受けた食品を提供するホテル等があります。ハラールで認められている食品は、認められていない食材の調理とは別に調理しなければならず、調理器具や食器等も別に用意する必要があります。
ハラール認証の手続きとは、このように厳密かつ複雑なハラールの基準を守るため、食品に関する認証機関が製造や加工の工程をチェックし、基準をクリアした商品に認証を与えてもらう手続きのことをいいます。
認証機関はインドネシア、マレーシア、シンガポール、アラブ首長国連邦をはじめとして世界中の国に存在し、日本には民間のハラール認証団体が5~10団体あります。
農業におけるハラール認証の手続きは、畜産農家の方が、たとえば牛専用のと畜場を設けて認証を受ける場合(ハラールの作法に従ったと畜はイスラム教の聖地であるメッカの方角を向き、祈りを捧げて処理を行う必要があります)や、農家の方が動物由来の原料を使用していない食品をハラールフードとして生産する場合等に行います。
ハラール認証は国によって基準がさまざまですので、1つの認証ですべてのイスラム圏国家に通用させることはできません。どの国又は地域の基準を満たす必要があるかを事前に確認し、希望する認証手続きを対応している認証機関に対して手続きを行う必要があります。
ハラール認証の手続きは、主に次の流れで行います。
①認証を受けたい基準を管轄する認証機関に事前相談を行う
②ハラール認証の書類を作成し、認証機関に申請する
③認証機関による書類審査を受ける
④工場及び製品について、認証機関による現地での監査を受ける
⑤審議を受け、問題なければ認証を受ける
以上でハラール認証を受けることができますが、認証の取得までは、たとえばマレーシアの場合は平均で半年、最長で1年程度必要となる等、国や認証機関によって一定の期間がかかります。
また、認証の取得後も、定期的な監査を受ける必要があります。
認証されると、食品のパッケージに付けるハラール認証マークが付与されます。
ハラール認証を受けた場合、その食材はムスリムの方々にとって安心できるものですので、購入してもらえる機会が増えます。また、ハラール認証を受けた食品として、販路を拡大できる可能性が高まります。